
|眼 |
F3号(273x220mm)
素材:天竺綿パネル,楮紙,岩絵具,水干,胡粉,雲母,金属粉,墨,アートレジン
2025



Azur rosé Galerie(アズールロゼギャラリー)企画「黒の肖像~思考の夢 vol.3」にお声がけいただき、黒をテーマとした作品を制作しました。
ご一緒させていただいた彫刻家の佐野藍さんは幻獣、とりわけ竜や蛇といった存在を主に手がけていらっしゃいます。
制作にあたっては、自身の中にある黒のイメージを掘り下げることに注力しながらも、
会場をともに構成する佐野藍さんの作品の姿が、常に心の片隅にありました。 静謐でありながら、空間を変容させる強い存在感をもつその作品像と、自身の絵の世界とが、違和感なく交わる光景を思い描いていました。
本作は、綿布を下地としたパネルに、墨で染めた和紙を継いで描いています。
完成に至るうえで特に大きなインスピレーションを得たのは、DMに掲載されている佐野藍さんの作品でした。
制作の合間に佐野さんの作品たちの姿を思い返すと、まどろむように優しく閉じかけながらも、確かな意思を宿した眼の表情が強く浮かんできました。
生命のように、作品そのものが刻々と変化することはありませんが、
光によって時の動きをもたらすことはできないかと考えながら、角度によって絵の具が瞬くよう手を加え、わずかな変化を宿す画面を目指しました。
絵の大元のイメージは、淡く柔らかく夜へと変化していく空と、雲の間から垣間見る果てなく続く夜の深さです。