大阪での個展と滞在制作の記録 / その1
2018年の春、1通の問い合わせが入る。
SNSを通じ作品を気に留めてくださった大阪のギャラリーさんからの展示のお誘いだった。
歴史のある荒木造園を母体とするギャラリーは、名前の通り緑溢れる中にあった。
屋久島をイメージして造られた庭は一見無造作に見えるが、そのバランスを人の手で造り維持することの難しさと自然の凄さを教えてもらう。高校時代に作ったビオトープが懐かしく思い出される。
絵をきっかけとして、知らない土地と人より誘いを受けたことに言い表す事のできない喜びを感じた。
2011年山梨での滞在制作の翌年から自営業者となり、事業を動かしつつ、いくつかの場所でも働くという生活が何年も続き、朝夕はおろか曜日の区別もなかった。そんな20代が過ぎ、ちょっとまずいなと感じていたタイミングで舞い込んだ話だった。
とにかく身動きが取れず、このまま頭の中が仕事ばかりで意識が醒めてしまっては、今まで頼りにしてきた勘も感覚も薄れてしまうのではという焦燥感に駆られていた。
あともう少し早ければきっと、忙しさからくる妙な責任感でお断りしていたように思う。
連絡を取り合い下見をして、1年後の春に個展と滞在制作をさせていただくことになった。
滞在制作中、折角なので庭にある珊瑚や石をいくつか分けて頂き、絵の具にして何枚か制作をした。
会場は空間の素晴らしさはもちろん、併設のcafeメニューも大変手が込んでおり、
食事も甘味もとても美味しかった。
普段の食事はおじさんマークのジャパンで仕入れたり、地元のパン屋さんフェルディナンド、スシローなどをローテーション。ディレクターの中川さんと荒木造園社長宅で頂いたたこ焼きも本当に美味しかった。
滞在中制作をしていた会場は横に広がる窓から自然光が入り、1日の経過を光で知ることができた。
乾き待ちの間は借りた自転車で散歩し、陽の光を浴びたり匂いを嗅いで、東京では味わえない贅沢で緩やかな時間を満喫した。