Statement

眺めることが好きです。
見ていることが曖昧になるくらいの距離から、茫洋とした視野で日々や人を捉えていたいと考えています。

私の描くものは自分自身の見た風景や心の動きをきっかけとしています。
水で絵具を広げながら自分の意思との境界を曖昧にしていくことで、風景のように意味も意図もない、
中庸さを持った画面となることを理想としています。

ただ、それだけでは寂しい気がするので、人の持つ情であるとか、優しさのようなものをわずかに残せたらとも思っています。

かねてより、同じ風景を目にしてもその中に異なるものを見る”人”というものの不思議さに興味を抱いてきました。
この違いは視覚機能にあるのか、心であるのか。人の気持ちというものはどこに生まれ、残り、消えていくのか。

憶えておきたい大事なことも、日々の中ではそれが何であったかをよく忘れてしまいます。
人は何を見て、何を思い、考えるのか。

思考の変遷や心の機微をできるだけ客観的で曖昧な形で風景に重ね、
描くことで視覚化し留めおきたいと考えています

風景を眺めていると、普段見えなくなってしまったものを思い出します。
それを憶えているために、描き見て、考え続けていきたいのです。


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