
| 夜 iii |
F0(140×180mm)
楮紙,木パネル,岩絵具,水干,胡粉,雲母,金属粉,アートレジン
2025
Azur rosé Galerie(アズールロゼギャラリー)企画「黒の肖像~思考の夢 vol.3」にお声がけいただき、黒をテーマとした作品を制作しました。
今展にあたり、改めてこの色と向き合いました。
これまで、緑や青を主な色調として制作を続けてきましたが、画業の始まりは青からでした。
青の制作を重ねるうちに、空の果てが少しずつ濃くなるように、行き着く先は黒なのではないかと思うようになりました。
夜の時間を包み込む黒は、私にとって深い安らぎをもたらす色でもあります。
黒を強く意識した日は、雪に包まれた青森の郊外、葬儀の合間にひとり散歩していたときのことでした。
見渡す限り何もない真っ白な雪原に、うっすらとだけ見えた山の黒い影。それを見つけた時の安心感。
喪服をまとい集う人々の姿を見つめながら、人の最期を見送る色が黒であることに意味を感じ、 人の生の行き着く先にも、空の果てのように深く黒い色があるのならば、どんなに素敵なことなのだろうと考えました。
その体験が、黒という色をより深く意識するきっかけとなりました。
今回の制作では、黒が濃く深まる夜の風景を土台に、私の思う黒がもたらす安らぎのある世界に意識を傾け、画面の中に浮かび上がる風景を描き留めました。
黒を扱うことで、私は自らの意識を改めて見つめ直すことができます。
真っ白の何もない空間の美しさや怖さと対照的に、夜闇の黒の中では、美しく微かに輝く星のように、さまざまなものが浮かび上がり、可視化されるのを感じます。 黒というテーマを夜の世界に置き換えることで、その色が持つ力や深みを、絵画として表現してみました。
